平成18年度

身障者、高齢者に雇用の場を!落下リンゴがインテリアに!?青森県弘前市 (有)炭工房アップル・スタジオ 谷澤實(たにさわみのる)さん

木の枝などと組み合わせた「姿炭」

弘前市にある全国的にも有名な精密機器メーカーに20年間勤務した後独立、タニサワ製作所を設立。メーカーの下請け会社として順調に事業を続けていながら、谷澤さんはある強い想いにもかられていた。
「やっぱり、この地域に住んでいるのだから、地域の資源を活かして、地域の人の雇用につながる、オリジナルの製品作りができないものだろうか、そんな技術を残していけないだろうか、とずっと悩んでいたんです」
 そして、その夢を実現するために谷澤さんが門を叩いたのが、青森県工業総合研究センターだった。
「そこで、当時、素材技術研究部の部長でいらした岡部敏弘(おかべとしひろ)先生に出会ったのです」
 2002年8月のことである。
 それから谷澤さんは、岡部先生の指導のもと、炭のメカニズム、木酢液の成分・採取方法、ウッドセラミックスの作り方などを学んでいく。
 そして、さまざまな樹木を材料として炭化物にしていった。そんな基礎研究の延長として、簡易で安価に製造でき、さらにリンゴ畑にも設置できる炭化炉の開発に取り組むことになる。
「この辺りでは、収穫を終えた田んぼの稲藁(いなわら)を焼くことが普通に行われていました。そこから、もしも不用な物も炭になったら燃料にもなるし、田んぼや畑に撒けば、土壌改良にもなる。これだったら、未利用の資源を利用することができるんじゃないか。そこで、思いついたのが、あの落下摘果リンゴだったんです」

●インテリアに生まれ変わった落下摘果リンゴ

  リンゴを炭にする――。
  いったい何のために?
  誰も思いつかないアイデアだった。

素朴さとモダンさが融合する作品

 しかし、そんな谷澤さんの提案を受けた岡部先生は、可能性を感じてくれたのだ。
 2003年(平成15年)2月、地域固有未利用資源の循環活用モデルとして、リンゴ姿炭の製造を本格的に開始する。
 しかし、問題は炭化する温度だった。
「テーマは、リンゴ農家の方が見て納得できるような仕上がりでした。素材の形、姿をそのままに残すということが想像以上に難しかったですね。何度も温度を変えて試作を繰り替えして、やっと『これだ!』というものに辿り着いたのです」
 こうして、それまで商品としては、誰にも見向きもされなかった落下リンゴは、まさにニュートンの林檎的なアイデアと、試行錯誤の末に、まったく新しいインテリア製品「りんご炭」として生まれ変わったのである。
 そして、2004年10月には、弘前市内で試験販売を開始する。また、翌年2月には、市内のホテルでも販売を始めるようになったのである。

●どんな場所にでも合う「りんご炭」

 実際に「りんご炭」を見せてもらった。
 リンゴそのものを炭化したというよりは、まるでブロンズで作り上げたようでもある。
 ところが、手に取ってみると、拍子抜けするほど軽い。水分のない炭そのものであるのがわかる。
 黒光りしたリンゴは、真っ赤なリンゴとは一味違い、重厚感を感じさせ、またモダンなイメージも漂う。
 木片や切り株の上に載せたり、花や葉っぱ、小枝をあしらったり、また松ぼっくりや枝などとともに籠に入れてみたり、とインテリアとしての見せ方も工夫がされている。