平成18年度
究極のアイデア――本と森との交換で山の再生を図る 福島県南会津郡只見町 たもかく株式会社

書店「たもかく」も床から天井まで本がぎっしり
一方、パルプメーカーの伐採は冬以外の時期に行われた。
これらの季節は樹木が活動している時期だが、この時期に伐採すると幹や根が腐り、新しい芽を出す萌芽更新をしないのだ。
「なぜ、冬以外の時期に伐った木が萌芽更新しないのかを理解するまでに、10年近くかかりました。結局その間、山は丸裸のままでした」それまで緑豊かだった山が、ある日突然、山肌むき出しの哀れな姿に変わった光景は吉津氏に強烈なインパクトを与えたのである。
●恵まれた日本の山を信じて
もう一つ、吉津氏には危機感がある。それはこれまでの山の価値を上げるはずだった森林政策によって、価値が上がるどころか下がっているという思いだ。「国の支援が、さまざまな仕組みを壊しました。補助金を出すから国の言う通りにしろとなり、それに従ったら将来の夢も、業者間の競争も、仕事の面白味も消えました。

書店「たもかく」の外観

店内にはさまざまな自費出版物も置かれている
只見町は大都市から遠く離れており、遠ければ集客力も落ち、距離が障害となるはずだ。
それでも吉津氏は希望を捨てていない。
「確かに距離は障害ですね。それに、日本一の豪雪地帯というのも。でも逆に、距離が離れているから、競合者も現れない。自分の思い通りのことが出来ます」
と、吉津氏は語る。
別れ際、吉津氏は遠くの山に目をやりながら、こう言った。
「日本の山は世界でも恵まれている。四季があり、豊かな森林資源があります。今、山はダメだと言われていますが、それは短期間のデータによるもので、データ上ではダメでも、森は今も育っています」
吉津氏の山を見る目は優しい。


