平成18年度
熊野の山で夫婦が栽培する「仏前草」――シキミ 和歌山県田辺市中辺路町 長井乾(ながいけん)さん
●林業への不安からシキミ栽培へ――
世界文化遺産に認定された熊野古道(くまのこどう)は、紀伊半島南部にあたる古い参詣道(さんけいどう)の総称で、「熊野三山」に詣でる信仰の道として、また「山岳信仰」の霊場として、全国から多数の参詣者や巡礼者が訪れる。世界文化遺産となった現在は、多くの観光客が訪れる人気スポットとなっている。この熊野古道のルートの一つに、紀伊田辺から熊野本宮大社に至る「中辺路(なかへち)ルート」がある。
その「中辺路ルート」にある中辺路町の小さな山里の集落。どの家も鍵がかかっていないような、素朴でひっそりとした静かな集落である。ここで、シキミを栽培している夫婦がいた。
長井乾(ながいけん)さん夫妻である。
シキミ(樒)とは、関東以西の山中に自生するシキミ科の常緑小高木で、葉は長楕円形で光沢があるのが特徴だ。
4月頃、淡黄白色の花をつけ、全体に香気があり、葉や樹皮から線香・抹香(まっこう)を作り、材は数珠にしたりもする。枝を仏壇や墓に供えることから「仏前草」と呼ばれ、日本人には馴染みの深い木である。
和歌山県南山間部では、従来から山野に自生している

気品ある香りを放つシキミ
全国的に見ても、この中辺路町はシキミの生産量においてトップクラスで、ほかには宮崎、鹿児島、四国及び近畿が産地として知られている。
25年ほど前になる。長井さんは、代々受け継いだ松林を切り拓いて、シキミを植えたことから、この仕事は始まった。
「我が家では、代々、山仕事をやってきたのですが、林業の将来が見えなくなってきて、『山仕事がなくなったら、どうすればいいのか?

長井さんが栽培するシキミ


