平成18年度
豪快かつ繊細な木彫ニューウェーブ 龍神村のチェンソーアート 和歌山県田辺市龍神村 有限会社チェンソーアート・ジャパン 城所啓二(きどころけいじ)さん
●驚くほど繊細な細工を見せるチェンソー
耳をつんざくような排気音が、激しいハードロックの音楽にのって、山々にこだましている。一瞬、モトクロスのレース会場にいるような錯覚に陥る。しかし、音の主は、複数のチェンソーだった。
和歌山県田辺市龍神(りゅうじん)村――。
和歌山県の中央東部に位置し、平成の大合併により、新生「田辺市」に属される。標高500m以上の山々に広がる森林が村の70%を占め、村内を流れる日高川(ひだかかわ)の上流には、「日本三大美人湯」として知られる龍神温泉がある。ここ龍神村では、毎年11月の半ば過ぎに「翔龍祭(しょうりゅうさい)」と呼ばれる林業まつりが行われる。
2005年から、そのまつりのメインイベントとして行われているのが、「龍神・彫刻競争」である。これは、「龍神チェンソーカービング組合準備会」が主催し、チェンソーアートの彫刻家(カーバー)が、全国から集まり、技術やスピード、そして作品を、2日間に渡って競うものだ。


城所さん宅の居間は、チェンソーアートのギャラリーにもなっている

丸太からみるみるうちにイルカが現れてくる
競技は、3つのテーマに沿った作品をそれぞれ1時間以内に仕上げるというもの。そのテーマとは、森の象徴「フクロウ」、これは初心者が練習用として挑む代表的な作品で、基礎技術が試される。次に今年の干支である「イノシシ」。これは、応用技術を競う。3番目のテーマ「アクア」は、「水」に関連した生き物や自然を表現するというもの。これは、さらに高度なテクニックと創造性、芸術性が求められる。
会場では、9人の選手、そしてゲストとして招かれたドイツのトップカーバーで、森林警備隊員のアンドレアス・マーティンさんが、巧みにチェンソーを操る。
最初は、ただの1本の丸太だったものが、みるみるうちに姿を変えていく。大、中、小のチェンソーを巧みに使い分け、真剣な表情で取り組む競技者たち。そして見守る観衆は、次第に浮かび上がるリアルな造形に歓声をあげる。


